量子力学

量子力学では系の状態があるヒルベルト空間の元(状態ベクトル)であらわされ、物理量(観測量)はその上のエルミート作用素(より強く自己共役作用素であるべきだが一般には満たされない)によってあらわされる。状態ベクトルψが観測量Aの固有ベクトルになっているとき、ψにおける観測量の値はその固有値になる。状態ベクトル固有値でない場合には、「期待値∫ψ*Aψ」のみが定義可能であり、量子力学は確率的な予測しか与えない。

 

量子力学における基本方程式はShrodinger方程式というものである(dψ/dt=Hψ)。ここでHは「対応する古典系」のハミルトニアン作用素で置き換えたものである。しかし、ここでの対応する古典系というのはナイーブな意味でそのようなものが存在するとは限らないし、対応もカノニカルとは限らない。これはただの古典的な直観に即した解釈であり、量子力学古典力学とは異なるものだという認識が必要である。

 

量子力学の公理はしばしば作用素の代数のレベルで定式化しておくと便利である。すなわち、作用素代数の表現空間としてのヒルベルト空間はいったん隅においておいておくのである。すると、古典系からスタートして量子力学を得る「正準量子化」という手続きが定式化される。すなわち、古典解析力学系が一つ与えられたとき、それをPoisson形式で書く。対応する作用素代数を、Poisson括弧を交換子に取り換えて定義することで対応する量子力学を得る手続きを正準量子化という。