解析力学とシンプレクティック幾何、ミニマム。

久しぶりにLandau-Lifshitzを拾い読みしたので、ミニマムをまとめてみる。

 

まず、解析力学は座標qと速度pを変数にとるラグランジアンLを指定することから始まる。これを時間について積分したものについて、固定端条件の下で変分原理を施すとEuler-Lagrangeの運動方程式が得られる。これがラグランジュ形式の解析力学である。

 

一方で、座標qと運動量pを用いたハミルトン形式がある。ラグランジアンLから、H=pq_t-Lでハミルトニアンを定義することで、ハミルトン方程式が得られる。ハミルトン方程式の利点は、qとpの扱いが「対称的」になり、形式の対称性が大きくなることである。さらに、Poisson括弧を導入すると、物理量の時間発展はハミルトニアンとの括弧積で記述できる。

 

つまり、一般に力学系を与えるにはPoisson多様体の構造で十分である。しかし、qとpという座標を局所的にでもとるためには、Poisson構造がシンプレクティック構造から来ていないといけない。これが、「解析力学の相空間がシンプレクティック多様体で与えられる」の意味である。

 

シンプレクティック多様体が与えられたときにラグランジュ形式に戻るにはどうしたらいいのか?それにはラグランジュ部分多様体を与えなければならない。シンプレクティック多様体Mのラグランジュ部分多様体L(これはさきほどのLではない。)が与えられると、Weinsteinの定理からLの管状近傍はLの余接束の零切断の管状近傍とシンプレクティック同相になる。よって、座標q、pがえられ一般速度もここから得られる。

 

もう一つの解析力学の有名な形式として、Hamilton-Jacobi方程式がある。これは、作用積分Sのt微分がLであることをSのq微分が一般運動量と見えることを用いて、書き直したものに過ぎない。

 

LLには書いていないが、Gromov以前の古典シンプレクティック幾何の中でよい定理の一つは、Arnold-Liouvilleのトーラス束定理だろう。これは、完全可積分系の相空間がトーラス束の構造を持つことを示す。n個の独立な(Poisson可換な)第一運動積分があるとき、それをR^nへの写像だと思うとsubmersiveである。さらに、それのファイバーが連結滑コンパクトであれば、ファイバー上の可換なn個のHamilton流はファイバーにトーラスの構造を与える。これが証明の概略である。